酸化と還元

関連情報:酸化と還元炎焼成について


酸化と還元

空気中には約20%の酸素があります。酸素は有機物を燃焼させエネルギーに変える事ができます。ものを燃やしたり、自動車を動かしたり、動物が活動するエネルギーを作るために使われます。
また、地球上の多くのものは、空気中の酸素がくっついて(酸化され)エネルギーを放出してより安定(元に戻り難い)なものに変わります。鉄が錆びるのは空気中の酸素で酸化されるためです。やきものの粘土はこの錆びた(酸化された)鉄(酸化鉄)をふくみます。赤い土はたくさん、白い土もわずかですが酸化鉄が含まれます。
一方、還元とは酸化の反対の反応のことです。酸化されたものにエネルギーを与えながら酸素を奪い取って、物質を活性の高い元の姿に戻す事です。



酸化焼成

やきものの焼成方法は、窯の中の作品に触れる酸素の量で酸化焼成と還元焼成に分ける事ができます。
燃料を使わない電気窯の場合は空気中の酸素と同じ酸素量20%の完全な酸化焼成です。
薪、灯油、ガスや石炭等の燃料を用いる窯でも酸化はできます。これらの燃料に対し少し多めの空気を吹き込みながら燃焼させ温度を上げて行きますが、このときの窯のは電気窯の酸素量よりすくないは0~20%未満の酸化焼成です。



還元炎焼成

還元炎焼成では、燃料を使う窯で燃料を多めに、空気を少なめにし、少し不完全燃焼させることにより、窯の中に一定の一酸化炭素が含まれるようになります。還元炎焼成は釉薬が溶けるまでの高温の時に開始します。この一酸化炭素は素地や釉薬に染み込み、高温で酸化鉄の酸素を奪い取り、土や釉薬の鉄分はエネルギー状態の高い本来の鉄に戻ります。
高温で還元をかける事により土の中の酸化鉄が還元されより活性の高い鉄は釉薬が溶け始める頃に活発に動きます。



還元炎焼成の効果

煙突から煙、のぞき口から炎が見えるくらいに燃料を多めにして還元をかけると温度上昇効率は悪くなりますが、それ以上にやきものによい効果を与えます。
還元炎焼成により、釉薬と土がよく反応して中間層という釉薬と土が溶け合った部分が多くなりやきものに深い色合いを与えます。透明釉をかけたやきものの色は多くの場合釉薬を通してこの中間層の色を見ているのです。(酸化と還元などの焼成方法によるやきものの色の違いは土や釉薬に含まれる鉄、銅などの金属成分とその量、釉薬の基材の組成によって変化します。解説はまたの機会に。)さらに、還元炎焼成は、炎のあたり方や、還元の強弱の変化により窯変と言う窯から出すまで予測できないゆらぎを作品に与えることがあります(土により変化の大小があります。また中性炎焼成は偶然または人為的にこの機会を増やすものです)。これが焼物の善し悪しを決める要素、一やき、二つち、三細工と言われる由縁だと思います。
また、土はよく焼きしまってやきものの吸湿性は改善され、丈夫な器になります。
このように、還元炎焼成はやきものの表情や性質に大きな変化を与えます。

2013.03.03 治良兵衛